認知症ケアの基礎知識

認知症とは、脳の機能が低下することで記憶力や判断力が衰え、日常生活に支障が出てくる状態を指します。 症状は人それぞれで、中核症状と周辺症状に分けられます。中核症状は、脳の機能低下によって直接引き起こされる症状で、物忘れがひどくなる、時間や場所が分からなくなる、新しいことを覚えられないなどが挙げられます。例えば、さっき食べたばかりの昼食のことを忘れてしまう、自宅への帰り道が分からなくなるといったことです。これらの症状は、認知症の進行と共に徐々に悪化していく傾向があります。

一方、周辺症状は、中核症状によって引き起こされる心理的・行動的な症状です。不安や焦燥感、抑うつ、幻覚、妄想、徘徊、暴力や暴言などが挙げられます。例えば、財布を盗まれたと思い込んで家族を責め立てたり、夜中に急に起き出して外を歩き回ったりするといった行動が見られることがあります。周辺症状は、周りの環境や人との関わりによって変化しやすく、中核症状よりも目立ちやすい場合もあるため、周囲の理解と適切な対応が重要です。

認知症の方へのケアは、症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させることを目的として行われます。そのためには、まず認知症の種類や症状について正しく理解することが大切です。そして、本人の気持ちを尊重し、穏やかに接するよう心がけましょう。具体的なケアとしては、記憶障害がある方には、メモやカレンダーを活用して予定を管理したり、見慣れた場所に置くことで必要なものをすぐに見つけられるようにするなどの工夫が有効です。また、周辺症状が出ている場合は、原因を探り、環境調整や薬物療法などを用いて症状の緩和を図ります。焦らず、ゆっくりと、本人のペースに合わせて対応することが、より良いケアにつながります。